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エレクトタイムス21 2001/12/12

マリア観音の音が、またも変貌を遂げつつある。半年前、関西ツアーを行った頃の彼らのサウンドは、不要な音を極力削った、理想の完成型の設計図、あるいは骨格とでも呼ぶべきシンプルかつ誤解の余地無き素手の格闘技、ストイックかつスリリングな真剣勝負を想わせるものであったが、先日行われたショウボートにての演奏は、一旦ゼイ肉をそぎ落したカラダを鍛え上げ、身につけた筋肉をフル活用した、実にパワフルかつゴージャスな、観せる(魅せる)要素の濃いものとなっていた。その陰には、メンバーに過大な期待を寄せる事によるマイナス面がもたらすバンド内の負担とロスを軽減し、尚かつ出来る限り自分の持ち場を増やす事により、演奏自体のレベルを下げまいとする木幡の思想が功を奏したと共に、それを実現し得た木幡自身のドラム等の技術力及び表現力(と言うより破壊力)の目を見張る程の飛躍的向上があった。 そもそもマリア観音とは、掲げた理想を現実のものとするべく、プログレッシヴすなわち進歩する事を宿命として自らに課したバンドであるからして、メンバー・チェンジ等のアクシデント直後を除き、常にその公約は果たして来た。何度か彼らを観た事がある方ならば、それは自ずと納得して頂けようし、更に言うなれば、だからこそマリア観音の魅力をもっと味わって頂くためには、現在進行形の進化の様を垣間見るべく毎回足を運ぶ事をお勧めする次第である。同ぢ曲でもアレンジが大幅に変わる事は珍しく無い。曲を大事にすると言う事は、曲の良さを最大限に生かす演奏をする事であり、そう言った意味でも、演奏力の向上に伴いアレンジが変化ならぬ進化する事は至極当然であり、歓迎すべき事なのだ。 そして、やはり何と言っても、マリア観音の魅力とは、ある一線を越えるトゥーマッチなまでの爆発力であり、更にはそのエネルギーが無秩序に暴走せぬ様、揺るがぬ規律によって貫かれる事によってのみ現出する恍惚的なまでの美しさ。それらは狂人の如き肉体の酷使と、強靭な理性の行使を以って初めて成し得る極めて稀な成果である。そして、その基である木幡の楽曲こそが、それらの設計図でありDNAであり、故に演奏力及び表現力が増す毎に、本来の楽曲の良さも更に生かされるのだ。要は、木幡の志の高さ及び感情の振幅の度合、感受性の豊かさこそが、そのままこのバンドの魅力であり可能性でもあり、繊細であるが故に揺れ動く感情、その激しさもさる事ながら、それを見事に生き写した楽曲、哲学的かつイマジネーション溢れる詩、それらを自らのものとして体現し得る技術と感性の習得こそがメンバーに課せられた使命であるのだ。今こそ、少々遠回りであったかも知れないが、彼らの歩み、そのプロセスが決して無駄でも間違いでも無い事が証明されつつある。しかしその道程に終わりは無い。永遠に続く茨の道である。だが、それは表現者として美を追求する者、美学を貫く者の宿命であるのだ。存続している事自体が現代の奇蹟であり希望でもあるマリア観音。いつ終わってもおかしく無い彼らを、今観ずしていつ、今聴かずしていつ聴くと言うのだ。


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