LYRICS

マリア観音「東夷偽史先住民拙言滅裂多仁」

1.義眼
2.絶滅
3.静かな夜
4.冬の蝶
5.漆黒界
6.刺生活

ER031

  義 眼


あぁ 目を隠してるはずなのに 片目で目と目が出逢った 恥ずかしくて そして
あぁ 見ちゃいけないはずなのに 片目で目と目が出逢った 恥ずかしくて そして

取って付けた不自由な左目でいいなら 焼かれ潰されたお前の左目に
代わりに差し上げようか

青白い群れの中 紛れながら雨風凌ぐ
吼えて転べば生け贄 遺るものは朧気な記憶
雨風を凌ぐ仕業 まやかしの絆と会話
身体の悪い振りをしろ 頭の悪い振りをしろ
絶滅へ螺旋の道 絶滅へ螺旋の道 絶滅へ螺旋の道 絶滅へ螺旋の道
僅かな手掛かりを消せ… 最後は琥珀色に塗り替える

網の目の夜には 腐った裸ばかりが
次から次へと どいつもこいつも
もしも地獄というものがあるとするならば
舌を嚙むことも出来ないかわり 擦り切れるまで恥知らず
次から次へと どいつもこいつも
次から次へと… 舌を嚙むことも…
舌を嚙み切れることも出来ないかわり 次から次へと 恥知らず

観自在菩薩 般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子
色不異空 空不異色 色即是空…

淀みの中の上澄みの中で 役にも立たない交わる片目を潰す
菖蒲の花咲く五月の雨に打たれて 二人は殺しの中で出逢った

吐き捨てられたかつての温もりと共に
愛の誓いの持つ煌めきを 今、ここに取り戻すんだ
奪われた目も耳も口も手も足も腕も腰も 明日への望みも
群青色のコールタールの絵具に混ぜ合わせ
偽りの未来に向かってぶちまけるんだ
獣も登って来れない 遠く高く日の陰るこの場所で
和獣の王猛々しくして 義を知る侵し難き天地の儚さを踏み締めながら
空高く 輪を描きながら舞い上がる
薄氷を踏むかの如き 繊細さを携えた俺達は
風を斬る 時を斬る 空を斬る 闇を斬る…
闇を斬る… 闇を斬る


  絶 滅


モンゴロイド コーカソイド ネグロイド アルメノイド オーストラロイド ディナール
インドアフガン アーリア セム語派 人種差別 白人至上主義 アパルトヘイト
オリエンタリズム エスノセントリズム 北方モンゴロイド 標識遺伝子 ab3st
樺太アイヌ 北海道アイヌ 宮戸貝塚人種 津雲貝塚人種 薩摩型 朝鮮人型 支那人型
大陸系金石併用期時代人 南方系馬来人 現日本人 雷神 風神 神人 天狗 山神 粛慎
蝦夷 扶余 出雲 朝鮮 倭人 土蜘蛛 隼人 肥人 熊襲
ネアンデルターレンシス アファレンシス アウストラロピテクス クロマニヨン ホモサピエンス
プロトヒューマン… 絶滅

滅び逝く生物は足早に 美しい魂を手に入れようとする
いじましい地平まで降りてゆけ 泥沼に身を鬻ぐこともある

生き馬の目を刳り貫いたら 食肉獣は卑劣な悪逆非道

原猿の群れ集う不毛の原野 見渡せるところまで攀じ登れ
道標なんぞ遺した日には 裸の猿の群れが我先に

俺達は小さな小さな水滴が巨大な岩に穴を穿つような 気の遠くなるような道程を経ながら
その日一日一日を生き延びられたなら それが俺達の勝利だった
やつらの動きを良く目を凝らして見てみよう
その動きは思った程早くも美しくも もちろん正しくもなかった
それは偽りの機能性に盲従した 愚鈍な家畜の歩みだからに他ならない
さぁ今日からまた気の遠くなるような道程を行こう
やつらの飼い慣らされた血と肉と骨と皮で 永遠に償わせるために
やつらの飼い慣らされた血の末裔が やがて追い着くその前に
何度も何度も償わせる為に… 何度も… 償わせるために

空とて親の敵さ 親とて群れの一人か 友とて群れの一人か おまえは群れの一人か
空とて… 親とて… 友とて… おまえは群れの一人か

歓迎されぬ進化はしばしば退化と決めつけられて 辺り一面に殲滅の花の種子を撒き散らせてしまうんだ
まだ目の見えぬ頃から隣の兄弟の乳を飲まさぬ様にして死に追いやりながらも 自らの邪悪な骨量を増してゆく
そんな強靭な個体の発育を促す 不吉な太陽の恵が
燦燦と 延々と ギラギラと ダラダラと… メラメラと
見上げた冷たい夏の空から  おまえは群れの一人か

空とて親の敵さ 親とて群れの一人か 友とて群れの一人か おまえは群れの一人か
空とて… 親とて… 友とて… おまえは群れの一人か   絶滅


  静 か な 夜


人類社会を形成したものは 征服と疫病と殺戮の歴史である
持ち込まれた鉄の斧 マッチ 医療品 生活物資
世界の富や権力は 何故現在ある様な形に分配されてしまったのだろうか

凶器の凶は凶悪の凶だろう
人間凶器を 緩みきった尻の穴に 決めてやれ 決めてやれ 決めてくれ
狩猟採集民より少ない労働力で より快適な生活を送りながら
より長い寿命を全うしている着飾った奴等を
追え 見付け出せ 探し出せ 見逃すな
撲殺 絞殺 銃殺 扼殺 毒殺 抹殺 絞殺 抹殺… 抹殺

殺伐と殺戮を殺風景に決めてやれ
レバーの様に凝固まった 錆び臭い黒い血が 風に乗り鎖蛇
おまえの不埒な心の戸を叩く おまえの不埒な心の戸を叩く

打ち明けただろう 恋人になろうぜ
打ち明けただろう 恋人になろうぜ
打ち明けたのは本当の事さ
打ち明けただろう 恋人になろうぜ

人間から虫ケラへ 恋人から虫ケラへ 虫ケラから蛆虫へ
おまえの不埒な心の戸を叩く おまえの不埒な心の戸を叩く

薄ぼんやりと蹴り殺せ 猥に微笑みかけるから からだろう
あぁ迸る怒りを胸に抱き あぁ君の胎内の臓器を喰らい尽くすさ 死ぬまで

静かな夜だ
静かな夜をありがとう… 静かな夜を


  冬 の 蝶


黒アゲハ 黄アゲハ ヒメジャノメ
イチモンジセセリ モンキチョウ オオスカシバ

翔んで火に入る冬の蝶
脆い朝陽を浴び ぼろ布が寒空に
声になる 声にならない
掠れた吐息 宙に舞う刹那の影絵

涙目に雪の空
拷問台に降り注ぐ白い鱗粉
偽りが 砕け散る
途切れた言葉 宙に舞う刹那の影絵

砕け散る 砕け散る
身を焦す 身を焦す
降り積もる 降り積もる

声になる 声にならない
冷気の中でしか 生きてはゆけないと
思い込んだ 我が身を切り刻む

涙目擦って見上げてみたら
明るく白い夜が笑ってた
共に過ごした時は戻らない
明るく白い夜が笑ってた
拷問台に降り注ぐ 拷問台に降り注ぐ
拷問台に降り積もる
白い鱗粉がキラキラ煌めく
再会の夜が明けてしまいそうだ


  漆 黒 界


ドス黒い欲望だと 誰しもに吐き捨てられたならば
売り渡したら無期懲役 死ねない地獄 無期懲役

耳鳴りに聞こえるけれど
おまえの声さ おまえの声さ
本当の声さ 本当の声さ
世界の声さ 世界の声さ
明るい世界は 明るい世界は
どこだ ここだ  誰だ 俺だ

あぁ黒い色が 悪の色と決めつけられてから
黒豹は 黒豹は 黒い鳥と十把一絡げ
あぁ黒く澄み切った 底の無い掟だから
漆黒の暗闇が 白い肌の寝込みを襲う
白く劣ってる赤い目の 無期懲役囚はたじろぐ
自由が恐いから 夜になると眠るのさ
黒豹さ 黒豹さ 黒い鳥と十把一絡げ…

差し当たって 疑われるという事もなく
果たして世間では 孤独から逃れ出るための
後生大事に撫で回された
国家 家族 平和 愛という人間の営みは
所詮 勘定尽くめの 擦れ枯らしの擬い物だったんだ
花が咲き乱れ 鳥が囀り 小川がせせらぐ
そんな季節の繁栄は 果てしなく巡り来る堂々巡りに
言い訳だらけの偽善の風が吹き荒れる 傲慢なる臆病者の犇めく
暗澹たる生ゴミの上から反吐を吐く 何度も何度も反吐を吐く
暗黒の世界の曼荼羅絵巻さながらを 逆さ吊りの地平から眺めてみようぜ
おまえの心の平和を覆す本当の敵は 血の繋がりの中に居た
おまえの慈しみを踏み躙る本当の敵は 血の繋がりの中に居たんだ
血の繋がり 血で繋がる 血が穢れる
常に上から下へと振り下ろされた 権利の顔して見え隠れする
本当の権力は決してその姿を表には現さないんだ
嘘泣きと 満面の微笑みと 連帯の喜びを永遠に強要し続ける
それをこの世界では
幸福 平等 平和… 何度も何度もそう呼ばれた
幸福 平等 平和…


  刺 生 活


おまえは憎まなければならない
おまえの呪われた過去と 暗雲の立ち込めるおまえの未来を もっともっと憎まなければならない
おまえの宗教的狂熱を憎まなければならない おまえの隔離暴力革命を憎まなければならない
所詮メシも運ばれて来なければ 糞も垂れ流し 誰もおまえの最後を看取る者など居らず
息を引き取る間際まで ほんのささやかな堕落さえも許されないこの世界を おまえは愛さなければならない
卵を冷やして孵す 放射線保護装置
荒れ地の鼠よろしく襲ったものの背中に飛びかかる 魚も獲れないのろま 魂の群れの人柱
近代的個人という人工的観念の脆弱さ 皆目把握することのできない ある男の自我の在り方
殺した方ばかりが騒がれ 殺された方は忘れ去られるこの現象
おまえの愛するに値するものを新たに創り出さなければならない
民話 お伽噺 昔噺 この非情さ 独特の残忍さ 不可解さ
剥き出しの情念の感触をおまえは愛さなければならない
己が身に同居する圧倒的支配力を持つこの魔物 化け物 異界の獣
反転する光と闇 反転する月と太陽 反転する昼と夜 反転する男と女 反転する善と悪 善悪の彼岸…
刺生活

直立不動の中心線が 教えてくれるぜ 本当の温もり おまえの急所を おまえの温もり
刺せ 刺せ 刺せ 刺せ 躯の真ん中

ハーロー リーチーウー ツーレーララーララーロー

ここに一人の鬼が産まれた 鬼とは征服された先住民のことである 古代的な鬼の一種としての土蜘蛛がある
土窟に住み 決して服従せず 荊棘を土窟に詰め込み ここに追い込み殺す
決して服従しないので やがて誅殺されてゆく
穴居卑賤 神と怪とを備え持つ アタ 穢多 非人 部民 奴隷 屠殺 カワタ 四つ 山伏 樵 仙人 山賤
マタギ 悪霊 悪鬼 霊鬼 邪鬼 般若 羅刹 阿傍羅刹 牛頭馬頭
慚愧の念 自己に対する恥じ入る念を外部に示す 慚愧の念 俺達虐げられた獄卒に引導を渡す 六文銭
慚愧の念に堪えない…

ここは おまえら下界の獣の登って来れない場所さ 家畜の毛穴の奥から 喉仏に五寸釘を押し当てら
流れを追い越す勢いで 頭蓋骨の髄まで がらがら音がする程
流れに揺蕩ふ天鵞絨の 毛穴に逆らう水平の がらがら音がする程
トウキョウトガリネズミ エゾトガリネズミ アズミトガリネズミ オオアシトガリネズミ ヒミズ ヒメヒミズ コウベモグラ アズマモグラ ミズモグラ ニホンカワネズミ
ここは おまえら下界の獣の登って来れない流れさ 喉が焼ける様な水だから 飲めないか…

豚を殺すか 牛を殺すか 馬を殺すか ヤギを殺すか 犬を殺すか 人を殺すか
何で捌くか 鉈で捌くか マギリで捌くか 斧で捌くか 民家の畔
何処で捌くか 何処に埋めるか 水の畔に埋めるか 平和な暮らし
おどま盆ぎり盆ぎり 盆から先きゃおらんと
盆が早よ来るりゃ早よもどる

おどま勧進勧進 あん人たちゃよか衆
よか衆ゃよか帯よか着物

おどんがうっ死んだちゅうて 誰が泣いてくりょか
うらの松山蝉が鳴く

家畜化できる動物はどれも似ているが 家畜化できない動物にはそれぞれの理由があって それぞれの顔がある
ただ一つ言えることは 本当の歴史を知るものは誰一人としていないということである 地層すら改竄される
豚を食べた回数だけ人を殺している 牛を食べた回数だけ人を殺している
おまえの躯はあらゆる物の死でできている
交配される範囲が狭くなり 血の交流が狭くなる
火器の分類と六四式小銃 火薬の分類と用語解説 弾道の原理と性質
火薬と弾薬の性能 銃身の構造と性能 銃の安全機能 射撃と命中の条件
羊 西アジア及び中央アジアのムフロン 現代では世界中で飼育されている
山羊 西アジアの山岳地帯に棲息するパサン 現代では世界中で飼育されている
牛 現代では絶滅してしまったオーロックスで 北アフリカ及びユーラシアに分布 現代では世界中で飼育されている
馬 南ロシアに分布 今では絶滅してしまった野生馬
鎮魂された犠牲者の魂は 再び鬼がこの世に出現することを防いでくれる魂になる
犠牲者の追悼を繰り返さなければならない 生贄の追悼を繰り返さなければならない
序列性のある集団を形成しない性質は 直ちに殲滅せよ
全滅しても愛だけが遺る…